保湿剤のこと

森皮フ科クリニック院長の中央林間日記 は移転しました。

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ヒルドイドの話を、ニュースでご覧になっている方も多いと思います。

これはいろいろな問題が絡み合った非常に複雑な話です。

保険を広く薄いものにするか、狭く深いものにするか? 

予防と医療の境界、医療と美容の境界線をどこで線引きするのか?

保険医療の水準をどこに置くのか?

いずれも、ブログ程度の媒体でシンプルに語ることはできません。

ただし結果論としては非常に単純で、「保湿剤にかかる医療費を減らすこと」が必要です。

それは悪いことをしている誰かが、ではなく、保湿剤を処方するすべての医師と処方されるすべての患者さんに必要なことです。

冬になったら肌が乾燥するんだから保湿剤がいるのは仕方ないじゃないか、という声をよく聞きます。

もちろん、その通りです。皮脂欠乏症の治療に保湿剤を塗るのは、医学的に100%正しいことです。

でも、肌が乾燥しないための努力はなさっていますか? 

寝るときに電気毛布やアンカーを使用していませんか?

入浴時に毎日ボディーソープやせっけんを使っていませんか?


「十割払っていいからヒルドイドをたくさん出してくれ」という患者さんもいらっしゃいます。

お金持ちなのはいいことで羨ましい限りですが、基本的にわたしはお断りしています。

そうやって一部の人が自費で薬をもらい始めると、本来保険薬であるヒルドイドが保険でもらうべき薬ではないという間違った社会通念が形成されていくからです。

(それに保湿剤を自費にすると混合診療禁止の原則からその他の薬もすべて自費にしなくてはならないとか、自費の場合は自由診療なので十割負担ではなく二十割負担になるとかいろいろなことがあって当初思ってらっしゃる以上の金額になり、結局は「やっぱり保険で」となることがほとんどなんですよね)

かといって、アトピー性皮膚炎のお子さんのように、本来保湿剤を塗るべき人が塗らなくなることで病気が悪化することは避けなければなりません。


最近急にニュースになって話題に取り上げられるようになった保湿剤の話ですが、私たち皮膚科医の間では長年議論されてきた問題です。

おそらく私だけでなくどの先生もそれなりに悩んで、自らの考えで最善と思われる対応をしてきたと思います。

ただ残念ながらどうしてもそれだけでは足りなくて、さらなる厳しい対応が必要になりそうです。

ヒルドイドからジェネリックへの移行であったり、処方量の減量であったり、適宜ご協力をいただきます。

いくら外来で粘られてもダメなものはダメなので、悪しからずご了承ください。


ちなみに、市販されている保湿剤の中で良いものを紹介します。

キュレルのシリーズは、ローションだけでなくクリームなどもお勧めです。ヒルドイドを上回る治療効果があるという論文も多数出ています。

ヒルドイドのジェネリックです。使用感はヒルドイドよりも軽めなので、顔に使うにはこっちの方がいいかもしれません。

セタフィル モイスチャライジング クリーム 566g

セタフィル モイスチャライジング クリーム 566g

セタフィルは、上位シリーズのセタフィルレストラダームが非常に高機能なのでアトピー性皮膚炎の方にはそちらをお勧めします。やはりヒルドイドを上回るデータが出ています。でもレストラダームはちょっとお高いので、普通の乾燥肌にはこっちの通常シリーズで十分かと

このほかにも、クリニックでは化粧品のノブが出した全身用クリームが購入できるようになる予定です。150gで1500円と、料金もメチャクチャ頑張ったものになります。